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CO₂から作る航空燃料が国際規格に適合、SAF普及の鍵は何か

CO₂から作る航空燃料が国際規格に適合、SAF普及の鍵は何か

ニュースの概要

英国のクリーン燃料企業OXCCUが、二酸化炭素を原料に独自の触媒と一段階の工程で作った合成燃料成分について、第三者機関Intertekによる試験を終えた。結果は、航空燃料の混合成分を定めた国際規格ASTM D7566のAnnex A4、すなわち芳香族を含むフィッシャー・トロプシュ合成ケロシン(FT-SPK/A)の仕様を満たすというものだ。廃棄物や回収した炭素から、従来の石油由来ジェット燃料に近い性質の成分を作れることを、外部の目で裏づけた形である。実験室レベルの主張から、航空業界が採用を検討できる水準の根拠へ一歩進んだと言える。

引用元: OXCCU、CO₂から製造したSAF成分が国際規格適合と独立検証(ADS Advance)

分析・見解

「規格に合う」ことがSAFでは最初の関門になる

航空燃料は、品質が少しずれただけで安全性に直結する。そのため新しい燃料成分は、ASTM D7566という国際規格に載らなければ、旅客機には使えない。今回の検証は、OXCCUの成分がこの規格の仕様を満たすと独立機関が確認した点に価値がある。

注目したいのは「芳香族を含む」という点だ。芳香族とは、環状の炭素構造を持つ成分である。ジェット燃料にはこれが一定量必要で、エンジンのゴム製シール材を適度に膨らませ、燃料漏れを防ぐ働きをする。多くのSAFは芳香族をほとんど含まず、石油系燃料と混ぜて薄める前提で使われてきた。芳香族を最初から含む成分を作れれば、混ぜる相手への依存が下がる。

一段階の工程が効くのは設備費と運転の単純さ

従来のCO₂由来燃料は、CO₂を一酸化炭素に変え、合成ガスを作り、フィッシャー・トロプシュ反応で長い炭化水素にし、さらに精製して調整するという多段階の工程をたどる。段階が増えるほど、装置も熱の管理も損失も増える。

OXCCUは触媒を工夫し、これを一段階にまとめたとする。設備を絞れれば、初期投資と運転の手間が減る。小規模な拠点でも成り立ちやすくなり、排出源のそばに置く分散型の設計にも向く。ただし、一段階で作ると目的外の成分も出やすい。今回の検証は、その選択性を実用水準にできている証拠の一つだが、長時間の連続運転で触媒が劣化しないかは別の問題だ。

原料のCO₂は便利だが、本当の壁は水素と電力にある

CO₂から燃料を作るには、炭素と結びつける水素が要る。この水素を再生可能エネルギーの電力で水から作ると、排出の少ない燃料になる。逆に、電力が化石由来なら、効果は大きく薄まる。

欧州のReFuelEU Aviationは、2030年に航空燃料の6%をSAFにし、そのうち合成燃料を一定割合で求める。2050年にはSAF70%という目標もある。合成燃料の枠があるのは、バイオ原料の廃食油や農業残渣に供給の上限があるからだ。CO₂由来は原料の天井が高い代わりに、電力という別の天井がある。今回の成果は技術の選択肢を増やすが、電力の確保という課題までは解いていない。

似た発表との違いを見ると立ち位置が分かる

SAFの世界では、実証段階の発表が相次いでいる。古い例ではドイツのSunfire、スイスのClimeworks系の取り組み、米国のTwelveなどがある。多くは複数工程を組む。OXCCUの特徴は、工程の短さと規格適合を同時に示した点だ。一方で、年産数万トン規模の商業プラントを動かした実績は、まだ示されていない。規格適合は必要条件であり、十分条件ではない。

ビジネスへの影響

航空会社と燃料調達担当者が今やるべきこと

短期で調達契約を結ぶ段階ではない。だが、将来の調達先候補として情報を追う価値はある。確認すべき点は三つだ。商業規模の稼働時期、1リットル当たりの価格見通し、そして使う電力の排出係数である。

SAFの価格は、石油系燃料の2倍から数倍と言われる。合成燃料はさらに高い傾向がある。そのため、自社の燃料費に占めるSAFの比率を、規制の義務量と照らして試算しておくとよい。義務量を超える分は任意だが、顧客企業の出張由来排出を減らす需要は確実に伸びている。

日本の企業が見るべき接点は設備と原料の側にある

日本ではSAFの国産化を進める方針があり、2030年に航空燃料の10%をSAFにする目標がある。国内には製鉄所や化学工場など、CO₂が集中して出る場所が多い。一段階工程の技術が商用化すれば、こうした排出源の隣に小さな燃料工場を置く案が現実味を帯びる。

触媒や反応装置の部材を供給する企業、再エネ電力や水素を用意する企業、CO₂を回収する企業には、提携の余地がある。早い段階で技術評価に加わっておけば、実証の場所探しという需要に応えやすい。

経営判断では「検証済み」と「量産可能」を分けて読む

今回の発表は、規格適合という大事な節目を越えた。それでも、量産の経済性はこれから示される部分だ。意思決定者は、独立検証の有無、連続運転の実績時間、実プラントの建設資金の確保という三つを見れば、発表の重みを自分で測れる。見出しの強さと、事業として回る確度を混同しないことが、投資や契約の失敗を避ける近道になる。

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