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インド国営BPCLが既存の製油設備でSAF生産へ 共処理方式が開く現実的な参入ルート

インド国営BPCLが既存の製油設備でSAF生産へ 共処理方式が開く現実的な参入ルート

ニュースの概要

インドの国営石油会社BPCLは、デンマークの技術企業Topsoeと組み、ムンバイ製油所で持続可能な航空燃料(SAF)を作る計画を明らかにした。新しい工場を建てるのではなく、すでにある灯油用の水素処理装置を改修する。そこへ使用済み食用油などの再生可能な原料を、通常の石油系原料と一緒に流し込む。対象装置の処理能力は日量4,000トンで、再生可能原料の混合は最大5%までとする。大規模な新設に比べて短期間で供給を始められる点が特徴で、インドが進める航空燃料の脱炭素化策に沿った動きである。

引用元: BPCL、ムンバイ製油所でSAF生産へ Topsoeの技術を導入(BioEnergy Times)

分析・見解

新設ではなく改修を選んだ、BPCLの割り切り

BPCLが選んだのは、新しい専用工場を建てる道ではない。ムンバイ製油所にある灯油用の水素処理装置を改修し、使用済み食用油などを通常の原料に混ぜて処理する方式だ。これを共処理(=石油由来の原料と植物油を同じ装置で一緒に処理すること)と呼ぶ。対象装置の処理能力は日量4,000トン、再生原料の混合率は最大5%である。単純計算で、再生原料は日量200トン前後になる。年間では数万トン規模だ。世界の専用工場には及ばないが、新設に比べて投資と工期を大幅に抑えられる。

5%という上限は、装置ではなく規格が決めている

航空燃料の国際規格(ASTM D1655)は、油脂由来の原料を製油所で共処理する場合、混合率を5%までと定めている。つまり5%は装置の限界ではなく、規格上の天井である。Topsoeの役割は、この枠内で灯油の品質を落とさずに運転できる設計を示すことだ。植物油は酸素を多く含む。そのため水素の消費が増え、反応時の発熱も大きくなる。既存の装置にそのまま入れると、触媒(=反応を進める物質)の劣化や腐食が早まるおそれがある。改修の中身は、こうした負担を吸収するための調整が中心になるとみられる。

インドの義務化目標が、共処理方式を後押しする

インド政府は、国際線の燃料に占めるSAFの比率を2027年に1%、2030年に5%とする目標を示している。航空需要が急拡大する国で、国内の製油所が足並みをそろえて供給を立ち上げる必要がある。国営のIndian Oilがパニパット製油所で共処理を先行させており、BPCLはそれに続く形だ。専用工場は原料の調達網まで含めると、立ち上げに数年かかる。改修なら、短い期間で最初の一滴を出せる。目標年が迫るなかで、この速さが決め手になったと考えられる。

共処理は入口にすぎず、原料の取り合いが壁になる

ただし、この方式には天井がある。混合率が5%で固定される限り、増産には製油所の数を増やすしかない。もう一つの壁が原料だ。使用済み食用油は世界中で需要が高まり、集荷網の整った地域に偏りやすい。日本でもコスモ石油の堺での専用設備が年3万キロリットル規模の計画で動き出したが、家庭や飲食店からの回収量が稼働率を左右する。BPCLの今回の判断は完成形ではなく、最短で供給実績と運転ノウハウを手に入れるための布石といえる。共処理で経験を積み、将来は専用設備や別の製造法へ進むための足場と見るのが妥当だ。

ビジネスへの影響

日本の元売りや航空会社が読み取るべきこと

BPCLの事例は、SAFの供給が専用工場だけで増えるわけではないことを示している。日本でも、既存の設備を活用して小さく始める選択肢は検討に値する。自社の装置が共処理に耐えられるか、触媒や材料の見直しにどの程度の費用がかかるかを、新設案と並べて比べるとよい。航空会社にとっては、供給元が増えれば調達先を分散できる。ただし共処理で作られる量は一度に少ない。長期契約を結ぶ場合は、数量の上限と増やせる時期を契約に書き込んでおくべきだ。

調達と認証で確認しておきたい三つの点

第一に、原料の出どころである。使用済み食用油は由来の確認が欠かせず、偽装や輸入原料の扱いが信頼を左右する。第二に、共処理で得た燃料のうち、再生原料に当たる分をどう計算して認証するかだ。混合分だけをSAFとして扱う方式のため、証明書の枠組みを事前に確認したい。第三に、価格である。再生原料は割高で、混ぜる比率が低くても原料価格の変動がそのまま響く。購入側は、価格の連動方式を契約で決めておくと安心だ。まずは小口の試験購入から始め、実績を見て拡大する手順が現実的である。

社内で今週から始められる準備

最初の一歩は、自社の燃料使用量と、規制で求められる将来の混合比率を一枚の表にまとめることだ。2030年に5%という水準が年間で何キロリットルに当たるのかが見えれば、必要な予算が具体になる。次に、取引先の石油会社に共処理の計画があるかを聞く。回答の有無だけでも、供給の確かさを測る材料になる。

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