羽田の国産SAF供給を東京都が支援、航空燃料の脱炭素化を実装段階へ

羽田の国産SAF供給を東京都が支援、航空燃料の脱炭素化を実装段階へ

ニュースの概要

コスモ石油マーケティングが、羽田空港で航空会社に国産SAFを供給する取り組みで、東京都の「国産SAF利用促進緊急対策事業」に採択されました。今回の制度は、既存の航空燃料が高値で推移する状況を踏まえ、国産SAFと従来燃料の価格差を追加的に補助する仕組みです。対象となるのは、日揮ホールディングス、コスモ石油、レボインターナショナルが共同出資するSAFFAIRE SKY ENERGYが製造する国産SAFです。羽田で実際の供給量を増やし、航空会社が導入時に負担する価格面の壁を下げることが狙いとなります。

引用元: コスモ石油マーケティング、羽田の国産SAF供給で東京都の緊急支援事業に採択(RIM Intelligence)

分析・見解

今回の採択で重要なのは、SAFの製造計画が一歩進んだという事実だけではありません。製造、空港への搬入、貯蔵、給油、航空会社の燃料管理という一連の流れを、実際の商用空港で繰り返し運用する段階に入った点に意味があります。SAFは既存の航空機や給油設備を大幅に置き換えずに使える可能性がある一方、原料の調達、品質確認、混合比率、持続可能性の証明を継続的に管理しなければなりません。羽田での利用拡大は、こうした実務上の課題を机上の計画ではなく、運航現場のデータとして蓄積する機会になります。

東京都の支援方式にも特徴があります。単純な定額補助ではなく、国産SAFと既存航空燃料の価格差を埋める設計であれば、燃料市況の変化に応じて支援の効果を調整しやすくなります。原油価格や為替、物流費が動く航空燃料市場では、SAFの割高感は固定された数字ではありません。従来燃料が急騰すれば差額は縮小し、逆に従来燃料が下落すれば導入障壁が広がります。価格差補助は、この変動を前提に航空会社の導入判断を支える仕組みです。

ただし、補助金だけで国産SAFが競争力を得たとは言えません。SAFの価格は、原料の集荷費、前処理、製造設備の稼働率、輸送距離、認証や追跡にかかる事務費によって大きく変わります。特に廃食油などの原料は、海外を含む複数の用途と競合しやすく、需要が増えれば調達価格が上がる可能性もあります。国内原料を使う場合でも、量の確保と品質の均一化が別の課題になります。したがって今回の支援は、完成した供給網への補助というより、将来の量産に必要な実証費用を社会全体で分担する性格が強いと考えられます。

独自のポイントは、羽田が単なる受け渡し場所ではなく、国産SAFの「価格と信頼性を測る市場」になることです。航空会社は燃料費だけでなく、供給が途切れないか、運航計画に支障がないか、環境価値をどのように報告できるかを見ます。空港で安定供給を続けられれば、製造事業者は設備投資の根拠となる需要見通しを得られ、航空会社は実際の運用負担を把握できます。価格差、供給量、給油手続き、環境価値の記録を蓄積することで、次の空港や他の供給事業者が参入する際の基準も形成されます。

今後は、東京都の支援期間が終わった後に需要を維持できるかが焦点です。企業の脱炭素報告や航空会社の排出削減目標が購入を後押しする一方、環境価値の二重計上を避ける管理や、原料から給油までの追跡可能性が欠かせません。国や自治体の補助、航空会社の長期購入契約、製造側の設備増強を別々に進めるのではなく、同じ数量計画に結び付ける必要があります。羽田での取り組みは、SAFを「高価でも試す燃料」から「条件を管理しながら継続購入する燃料」へ移行できるかを判断する、実装段階の試金石になります。

ビジネスへの影響

航空会社にとっては、価格差補助によって初期導入の負担を抑えられるため、まずは特定路線や一定期間の運航でSAFを使い、給油手順や燃料管理の実績を作る好機になります。ただし、補助対象の期間、対象便、混合燃料の扱い、環境価値の帰属を契約前に確認しなければなりません。購入量だけでなく、二酸化炭素削減量をどの基準で算定し、統合報告書や顧客向け情報にどう反映するかも決めておくべきです。

燃料供給事業者には、供給量の拡大と同時に、欠品時の代替手段、品質検査、在庫管理、空港側との作業分担を標準化することが求められます。補助金がある期間だけ需要が膨らむと、終了後に購入量が急減する恐れがあります。航空会社との複数年契約や、利用量に応じた価格設計を組み合わせ、補助に依存しない需要の見通しを早期に作ることが重要です。

空港を利用する荷主や旅行関連企業にとっても、SAFの利用は広告文句だけで終わらせず、出張や貨物輸送の排出量算定と結び付ける必要があります。購入証書や環境価値の扱いを確認し、実際の燃料使用分と主張できる削減分を区別すれば、環境報告の信頼性を保てます。投資判断では、燃料単価だけでなく、供給の継続性、認証書類の取得費、社内報告の工数まで含めた総費用で比較するのが現実的です。

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